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「浪人」の意味

突然ですが、みなさんは「浪人」という言葉の由来をご存じですか。下に大辞泉小学館)より引用した意味を紹介します。

 

 

【浪人】
1 古代、本籍地を離れ、他国を流浪している者。浮浪人。

 

2 (「牢人」とも書く)中世・近世、主家を自ら去ったり、あるいは失ったりし  た武士。江戸時代には幕府の大名取りつぶし政策などにより著しく増加し、政治・社会問題となった。浪士。

 

3 入学試験や入社試験に不合格となり、入学や就職ができないでいる人。また、職を失って、きまった職のない人。「一年―して志望校を目ざす」

 

当然ですが現代で使う言葉は3ですね。しかし、本来の由来は1200年以上前にさかのぼります。今回は1の意味について掘り下げます。

 

まず、律令制が根底にあります。律令制で有名なのは645年の大化の改新や701年の大宝律令ですね。小学校でも習う用語です。
律令の律は刑法、令はそれ以外の行政上必要な諸法規の集成で、この法体系を機軸に国家の諸制度が整えられたのです。省庁や刑罰、租税システムなどが制度化され中央集権国家が確立しました。8世紀(奈良時代)の前半には、律令制による中央集権が強力に推進され、貴族層の社会的・経済的発展を反映して、華やかな貴族文化が栄えました。


ですが、繁栄したものには衰退がつきものです。早急な権力集中化を目ざして導入された律令制に現実の土地や人民の存在形態との矛盾が明らかになりました。つまりは国民が苦しみ始めたということです。結果として増加したのが浮浪人です。ちなみにこの浮浪人たちは本籍地を離れても所在は明確で調庸(調→諸国の産物を納める・庸→労働の代わりに麻布を納めること)はきちんと納めていたという点は面白いです。

 

さて、この古代の浮浪人と現代の浪人生とを比べてみますか。

 

共通点は浮浪たちは重い税負担に耐えるだけの能力がなかったといえます。同様に現代の浪人生たちは第一志望大学に合格できるだけの能力がなかったといえます。

 

相違点は古代の浮浪たちは私度僧(国家の許可なく出家すること)や寺社での労働などいわゆる逃げ道があったことに対して、現代の浪人生にそうした抜け駆けはありません。一年、二年とひたすら勉強して見事合格を手にできたときだけ、浪人生脱却ができるのです。

 

なかなか無理があったかもしれませんがこうして歴史と現代の言葉をつなげるとなかなか楽しいものがあります。皆さんもぜひ自分で気になるものを調べてみてください。

※参考 日本大百科事典 大辞泉 日本史用語集